塩麹、味噌、醤油麹。
こうした発酵調味料には「和食のもの」というイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。
でも実は、発酵調味料に和食も洋食もありません。
その理由は、
「うま味」
という言葉の正体を知ると、はっきり見えてきます。
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発酵食品を手作り、田舎暮らしを実践している椿留美子です。
東京から家族で移住、のんびり・・と思いきや、全く忙しい!
全然スローライフじゃないよ〜、と思いながらあたふたしています。
田舎暮らしの知恵と奥深さをお伝えしたいと
東京と田舎を行ったり来たりしながら発酵教室を開催しています。
毎朝メールより音声配信をしています。
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発酵調味料に、国境はなかった――うま味が世界の常識を変えるまで
「発酵調味料は和食のもの」という思い込み

発酵調味料は、和食の枠に収まらず、いろいろな料理の味を底上げしてくれる存在です。
カレーやトマトソースに、ひとさじの味噌
カレーやトマトソースを作るとき、隠し味でお味噌をひとさじ加えると、
トマトの酸味がまろやかになり、ぐっと深みのある味になります。

このお話は以前のブログでもご紹介したことがありますが
この方法には注意点があります。
調子に乗って入れすぎると、味噌の香りが前に出すぎてしまうことがあるからです。
実際、家族から「カレーが味噌の味がする」と言われてしまったこともありました(苦笑)
隠し味は、あくまで隠し味。
ほんの少しで十分です。
こちらのエピソードは過去ブログからどうぞ。
【ワンオペ健康管理に疲れたら】こっそり仕込むステルス発酵でジャンク好きの味覚をリセットする方法
塩麹は、洋食にもよく合う

塩麹も同じで、お肉やコンソメを使わなくても、
野菜と塩麹だけでちゃんと満足感のあるスープになります。
パスタソースやグラタンの隠し味にしたり、
鶏肉や白身魚を塩麹に漬け込んでからオーブンで焼いたりするだけでも
驚くほど深みのある味わいになります。
塩麹はお塩の代わりに、野菜麹はコンソメやブイヨンの代わりになる。
そう考えると、麹系の調味料の出番は、和食の中だけにとどまりません。
「うま味」は、日本語だった
こうして発酵調味料が洋食にも合う理由を突き詰めていくと、「うま味」という言葉そのものにたどり着きます。

昆布だしから生まれた言葉(1908年)
うま味という概念は、1908年、東京帝国大学の池田菊苗(いけだ きくなえ)教授が昆布だしの中から見つけ出しました。
昆布だしに浸した豆腐を味わっていたときに、
「甘味・塩味・酸味・苦味とは違う、もう一つの味がある」
と確信し、その正体がグルタミン酸というアミノ酸だと突き止めたのだそうです。
そして、この新しい味に「うま味」という名前をつけました。
世界に認められるまで、100年近くかかった理由
面白いのは、この発見からすぐに世界に認められたわけではなかったことです。
長い間、欧米では
「甘味・塩味・酸味・苦味」
の4つしか基本の味として認められていませんでした。
うま味が学術的に認められたのは1985年、ハワイで開かれた国際シンポジウムでのことです。
さらに、舌の上にうま味を感じる専用の受容体があることが科学的に発見されたのは2000年になってからでした。
発見から、実に100年近くかかったことになります。
翻訳されずに世界へ広がった言葉「umami」
今では「umami」という言葉が、翻訳されることなく、
そのまま世界の言葉として使われています。
寿司や津波と同じように、日本語がそのまま世界の共通語になった、数少ない例のひとつです。
うま味には、7〜8倍になる相乗効果がある
うま味には、もう一つ面白い性質があります。
「相乗効果」です。

グルタミン酸×イノシン酸の組み合わせ
1957年、グアニル酸のうま味を発見した研究者によって、
グルタミン酸と、かつお節やお肉に含まれるイノシン酸を組み合わせると、
うま味の強さが7〜8倍にもなることがわかりました。
日本の「昆布とかつお節のだし」は、まさにこの組み合わせです。
世界共通の組み合わせの知恵
そして面白いことに、この知恵は世界共通でした。
西洋では、トマトや玉ねぎ、にんじん(グルタミン酸)とお肉(イノシン酸)を煮込む料理。
中国では、長ねぎや生姜とお肉を合わせる料理。
国が違っても、たどり着く組み合わせは同じだったのです。
○ 日本:昆布(グルタミン酸)+かつお節(イノシン酸)のだし
○ 西洋:トマト・玉ねぎ・にんじん(グルタミン酸)+お肉(イノシン酸)の煮込み料理
○ 中国:長ねぎ・生姜(グルタミン酸)+お肉(イノシン酸)の料理
味覚は文化によって違っても、美味しさの土台になっている仕組みは、
世界共通だったということです。

発酵調味料は、うま味をさらに重ねる道具

塩麹・味噌が持つグルタミン酸の力
塩麹や味噌が旨みを生み出すのは、発酵の過程でタンパク質が分解され、
グルタミン酸をはじめとするアミノ酸が生まれるためだと言われています。
トマトや肉の組み合わせがすでに持っているうま味の相乗効果に、
発酵調味料のグルタミン酸を重ねることで、味はさらに奥行きを増していきます。
いつもの料理に、ひとさじ加えてみる

トマトを使った煮込み料理や、お肉のスープに、塩麹や味噌をひとさじ加えてみてください。
発酵クラスのレッスンでも、発酵トマトソースを使った洋食メニューを実践することがあります。
トマトとお肉の煮込み料理は、もともとうま味の相乗効果を備えた組み合わせです。
そこに塩麹や味噌を重ねると、うま味の上にさらにうま味が重なり、
市販の調味料だけでは出しにくい深みが生まれます。
実際に味わってみると、その違いにきっと驚くはずです。
うま味は、日本語から生まれて、世界共通の言葉になりました。
発酵調味料が和食の枠を飛び越えていくのも、考えてみれば自然なことです。
うま味という感覚そのものに、もともと国境なんてなかったのですから。
「和食にしか使えない」
という思い込みを手放すだけで、台所での発酵調味料の出番は、ぐっと広がっていきます。
難しく考えず、まずはいつもの一品に、ひとさじ加えてみてくださいね。
どんな組み合わせで「うま味の重なり」を見つけていくか、
それも料理の楽しみ方の一つですね。




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